日本でウイスキーが製造されるようになって、もうすぐ100年。他の生産地に比べるとまだまだ歴史は浅いですが、日本の高品質なウイスキーは世界中で評価されています。今回は、日本各地の蒸溜所とその特徴について解説します。
サントリー
山崎蒸留所
日本で最初のウイスキー蒸溜所で、1923年に操業を開始しました。サントリー創業者・鳥井信治郎氏の「良い酒は良い水が生み、良い熟成は良い自然環境なしにはあり得ない」という信念のもと、日本全国を探しまわった結果、選ばれたのが京都郊外の山崎でした。
霧に覆われた竹林は常に湿潤で、かつて千利休もここに茶室を構え、豊臣秀吉にお茶を点てたという名水の地。山崎蒸溜所では、世界でも稀なモルト原酒の作り分けが行われており、その種類はおよそ100種類にも及ぶ多彩さです。

白州蒸留所
白州蒸溜所はサントリーがウイスキーづくりを開始後、山崎蒸溜所の開設50周年を迎えた1973年に2番目の蒸溜所として誕生した蒸溜所。山梨県の甲斐駒ケ岳の山麓、標高700mの場所にあります。
当時の社長、佐治敬三氏の強い意向で周囲は広大な森林に囲まれており、別名「森の蒸溜所」と呼ばれています。工場敷地は約82万㎡で、敷地内には複数の貯蔵庫、ウイスキー博物館、レストランのほか、ウイスキー製造に不可欠なウイスキー樽の制作工場まであります。

ニッカウヰスキー(アサヒビール)
宮城蒸留所
ニッカウヰスキー第2の蒸溜所として1969年に竣工しました。気候条件は本場スコットランドのローランド地方に似ているといわれています。水源は新川(にっかわ)と広瀬川という二つの清流が合流する場所にあり、周辺には深い森が広がっています。起伏を生かした約18万坪の敷地には多くの樹々が生い茂り、景観を守るためにすべての電線が地中に埋められるなど徹底されています。
そのため、工場らしい殺風景さや巨大な建物はなく、それぞれの工程ごとに分けられた可愛らしい赤レンガ棟が点在していて和やかな風景です。最新式のコンピューター制御と、操業当初から使用されている巨大な銅製のポッドスチルなど、伝統と最新技術がうまく融合した工場といえます。

余市蒸留所
スコットランド留学から帰国したニッカウヰスキー創業者、竹鶴政孝氏が本場のスコッチに負けないウイスキー作りをめざして見つけた理想の地が北海道余市でした。強い海風、森や清流、気候は寒冷と、まさにスコットランドのハイランド地方そのもの。大麦の産地でもあり、ピートや石炭の入手が容易だったことも好都合でした。
そして1934年に余市蒸溜所が開かれました。本場スコットランドでもほとんどの蒸溜所が蒸溜にガスを使用しますが、余市ではスコットランド伝統の石炭直火蒸溜を現在も採用しています。余市独特のスモーキーフレーバーと力強い風味は、この製法なくしては生まれることはなかったでしょう。

キリン
御殿場蒸留所
キリンの御殿場蒸溜所は富士山の麓、海抜620mの高地に位置します。1年を通じて霧が発生する冷涼湿潤な気候で、富士山の伏流水にも恵まれた環境にあります。ウイスキーの熟成には180リットルと比較的小ぶりなホワイトオーク樽を使用。大樽に比べ、ウイスキーと樽が接する面積が増えるというメリットがあります。
もちろん大樽を使用した方が効率は良いのですが、独特の香味を熟成するため、あえて非効率な方法を採用しているのです。モルト原酒だけでなく、グレーン原酒の製造も行っており、この蒸溜所内でブレンドからボトリングまで行っています。

いずれの蒸溜所も豊かな天然水に恵まれた地にあり、その水を使ってそれぞれ独自の製法で高品質なウイスキーづくりを行っています。ニッカウヰスキーの創業者、竹鶴政孝氏は「ウイスキー作りにトリックはない」という言葉を残しています。
良いウイスキーをつくるためには技術だけではなく、良い自然環境が重要なことがこれらの醸造所を見れば理解できます。今回ご紹介した蒸溜所は、全て見学可能です。一度訪れて、それぞれの違いを楽しんでみるのも良いでしょう。
ウイスキーまとめ - 豆知識
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