日本のウイスキー規定量が海外でも通じる、とは限りません。ウイスキー「シングル」の場合、地域によっては日本の倍にもなることがあります。
そもそもシングルって?
バーで「ラフロイグ、シングルのロックで」などと注文している方をよく見かけます。「シングル」とは、ウイスキーで言えば一杯分の分量を指すものですが、実は何mlなのか明確な基準がなく、国によって異なります。
もともと、アメリカでウイスキーなどの強いお酒を出す際に、一杯あたりをワンショットと言っていたもので、このワンショットがシングルに該当します。「ダブル」だと当然、その倍ということです。
先に述べた通り、基準がないことから「シングル」を頼んでも「ダブル」のような量で出てきたりするお店もあることから、実際にはお店によってもまちまちです。
ちょっと気取って「ワンフィンガー」
シングルを「ワンフィンガー」、ダブルを「ツーフィンガー」という呼び方もあります。これはタンブラーに注いだウイスキーの量を表す単位で、シングルの量を注ぐとちょうど横にした指一本分の深さになることから使われるようになりました。
もともとイギリスでは、1400年代からあった古い測定法です。日本では作家の村松友視氏が、1986年に出演したサントリー・オールド・ウイスキーのCMで「ワンフィンガーでやるも良し。ツーフィンガーでやるも良し。」と自分の指で表現したのがその年の流行語となり、広まりました。
日本での規定量
「シングル」に明確な基準はないのですが、日本の多くの店では「シングル」を30ml量で出すのが一般的です。戦後、サントリーが洋酒文化を広めるため、全国各地に直営のトリスバーをオープンさせ、そこでワンショットを30mlとして提供していたのを他店が習い、広まっていったといわれています。
戦後間もない頃だったということで、日本にいた米軍兵、いわゆる進駐軍の影響もあってアメリカ式の呼び名が取り入れられたのかもしれません。
また、バーで使うメジャーカップも一般的には30mlなので、計量しやすいという理由もあるのでしょう。
世界の国々での規定量
アメリカ
先に見てきたとおり、もともとワンショットの起源はアメリカです。ワンショットと聞くと、拳銃を思い起こさせる少々物騒な言い方ですが、西部劇などで強い酒を小さなグラスに入れて、一息に喉に放り込むシーンを見れば、「確かに」と納得します。
アメリカで使われている液量単位はオンス(fl.oz)で、1オンス=29.6mlはほぼ30mlなのでこれをシングルとして出す店が多いようです。しかし、アメリカの液量単位にはジガー(jigger)もあり、こちらは45mlなので、店によってはこのジガーをシングルとして出す店もあります。
イギリス
イギリスにおいては1930年代にシングルを表す「ショット」という言い方が伝わったと言われています。しかし、イギリスの中でもイングランドとスコットランドでは、シングルの量が異なっています。イングランドでは1ショット=45mlです。
アメリカ流に言えばこれは1ジガーということになりますが、実はイングランドでは1ジガーは60mlになります。ちなみに現在では、イングランドではジガーという単位はほとんど使用されていません。
スコットランドでは、シングル=60mlになります。スコッチウイスキーの故郷とあって、「ちまちま30mlずつ頼んでいられない」ということなのかもしれませんね。さらに言えば、イギリスのお隣、アイルランドではシングルを75mlで出すことが多いとのことなので、それぞれの国のウイスキー嗜好頻度なども量に影響を与えているのでしょう。
このように、アメリカとイギリスではシングルの規定量が異なっています。日本国内でも、そのバーがアメリカンスタイルなのか、あるいはイングランドやスコティッシュスタイルなのかで変わってくることもあるのでしょう。
バーに行ってウイスキーのシングルを頼んだ時に、もし他の店のダブルぐらいの量で多めに注がれて出てきたら、「この店はスコットランドスタイルなのかな」などと思いを巡らしてみるのも楽しいかもしれませんね。
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